オーストラリアのお話:子羊のロースト
オーストラリアは移民の国。アジア、ヨーロッパ、アフリカとありとあらゆる国からやってきた人たちが住んでいます。オーストラリア人にとっては、子供の頃から肌や目、髪の色が違う世界中からやって来た人たちが周りにいるのが当たり前ですから、人種が違ってもみんな同じオーストラリア人という考え方になります。
そうは言っても、元々は英国系の移民が多かったわけで、そうなると普通はオーストラリアに住んでいるからと言っても、やはり人種が違えば「外国人」という目で見るのではないかと考えてしまいがちです。でも、ある時スーパーで買い物をしていた時の出来事で、そうではないということを実感しました。
メルボルンに出張した際に、ちょっと買いたい物があって郊外のスーパーに立ち寄ったのですが、スパイスコーナーの前を通りかかったら、20代後半のお兄さんに声をかけられました。夕食にガールフレンドを自宅に招いていて、彼女に子羊のローストを作りたいけれど、作り方が良く分からないから教えてもらえませんか、と言うのです。
写真は子羊のはちみつマスタードのグリル。(撮影用食器・カトラリー協力:ノリタケ)
どう見ても典型的なアジア人の自分に、子羊のローストの作り方を聞くということは、私のことを“見た目はアジア人でも、自分と同じオーストラリア人”と思ってくれているということです。この時私は、長年住んだオーストラリアから日本に帰国して数年経ち、オーストラリアを訪れている日本人という立場だったわけですが、「オーストラリアにいる=オーストラリア人」と取ってくれて、私にローストの作り方を聞いてくれたんだなあ、といたく感動しました。
勿論この青年には、懇切丁寧にローストの作り方を教えてあげました。ご本人は、にこにこ笑顔を浮かべ、嬉しそうに「Thank you! 」と言って、材料を買っていきました。
とても嬉しい出来事でした。